『べらぼう』で花魁・花の井を演じるまで

 小芝の所属したオスカーには毎年12月にメディアを集めて、所属タレントが晴れ着で登場する「晴れ着撮影会」という恒例行事がある。集合写真を撮る際にセンターポジションに立つ人間がオスカーの看板タレントなのだが、小芝は2019年に初めてこのセンターとなった。以後2023年まで小芝はセンターを務める。

 この2019年には三井住友カード「SMBCモビット」シリーズのCM出演が決まり、翌2020年からはメイクアップブランド「CANMAKE」のイメージモデルに就任。以後は明るく、清潔なイメージを活かしCM出演も増えていく。

「ランチパック」のイメージキャラクターを務め、コラボ商品をプロデュースしていることでもお馴染み 山崎製パン公式YouTubeチャンネルより

 2019年以降、小芝はドラマへ出演する際には主役、もしくはヒロイン役と常に大きな役を担うようになっていく。もともと憧れの女優には寺島しのぶ、安藤サクラ、蒼井優、満島ひかりと一つのタイプにとらわれない演技派女優を挙げているが、2023年あたりからはコメディアンヌ以外の一面を強めていく役も増えていった。

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 そして、2023年放送の『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日)ではこれまでのイメージをガラリと変える。役柄に合わせ、自らの希望で髪を金髪に染め、主人公・鼓田ミナレを演じたのだ。

『波よ聞いてくれ』公式Instagramより

「私は今まで、周りの個性的な人に振り回される役が多かったんです。でもミナレは、自分が振り回して引っ張って行くタイプ。性格的になかなか苦手な部分があるんですけど、今回はドーンと構えて(笑)。初めての挑戦を、頑張りたいと思っています」(「日経MJ」2023年5月12日から)

 さらにこの年の10月期のドラマ『フェルマーの料理』(TBS)では、クールな性格のヒロインを演じるなど、振り回される役だけでなく強い女性像も演じられるようになっていく。また同年のNHK『あきない世傳 金と銀』で時代劇初主演、そして2024年にはフジテレビ『大奥』でも主人公である五十宮倫子を演じるなど時代劇での経験も重ねていく。『べらぼう』での小芝の見事な演技は、こうした作品の集大成といえる。

 高まる役者としての評価に加え、2023年からは『ぐるぐるナインティナイン』(日本テレビ)の名物企画「グルメチキンレース・ゴチになります!」にレギュラー出演し、お茶の間の知名度も上がっている。これまでスキャンダルも一度もなく、安心して見られる女優として評価は磐石なものとなりつつある。

 今年1月には14歳から所属したオスカープロモーションを離れ、菅田将暉、中村倫也、木村佳乃、清野菜名らが所属するトップコートへと移籍。移籍後第1作目といえる『べらぼう』で評価を上げた。事務所移籍を機に、これまでとは異なる作品世界でも活躍の場を広げていくことは間違いないだろう。

『べらぼう』五代目瀬川こと花の井 公式Instagramより

 もともとNHKドラマでの主演が多い役者でもあり、朝ドラのヒロイン役も視界に入っているだろう。小芝の女優としての真価はこれからが本番と言えるかもしれない。