『焼け石に水』『8人の女たち』など、カンヌ、ベルリン映画祭の常連であるフランス映画の巨匠フランソワ・オゾンの最新作、『秋が来るとき』が公開となった。
監督自身の子どもの頃の思い出に着想を得たという本作は、自然豊かなフランス・ブルゴーニュの秋を舞台にした人生ドラマ。サスペンス要素も含みつつ、人生の終盤をドラマティックに描き出していて、初期のオゾン作風を彷彿とさせる。
本作でオゾン監督が描きたかったものとは。キャストへの思い、人生の「秋」についても語ってもらった。
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高齢の俳優を起用した理由
──本作は、前作『私がやりました』(23年)とはかなりテイストの異なる作品ですね。前作は、ナディア・テレスキウィッツとレベッカ・マルデールという若手女優2人を主人公にしたファンタジックで快活なコメディー作品でしたが、高齢の俳優を起用した理由から教えてください。
フランソワ・オゾン監督(以下、オゾン) 前作では若い女性が活躍する作品をつくったので、次はある年齢を超えた女優たちを起用したいと考えていました。
私は常々、70代、80代の女優たちのシワにこそ人生経験と時の流れの美しさが宿っていると思っているのですが、現実には高齢者は、スクリーンでも社会においても、あまりにも早く姿を消しています。
私が『まぼろし』(01年)でシャーロット・ランプリングの起用を決めた時、まだ50歳の彼女に対し、誰もが「彼女は歳を取りすぎていて、誰も興味を持たない」と言ったのを覚えています。
こうした現状に問題提起を投げかける意味でも、今回は高齢化に伴う課題を織り込み、少しダークな作品をつくりたいと思っていました。