映画『教皇選挙』が大ヒット中だ。カトリック教会の最高指導者であるローマ教皇が死去し、世界各国から集まった枢機卿たちによって新しい教皇が選ばれる、秘密投票〈コンクラーベ〉を舞台にした政治スリラーだ。高齢男性たちによる密室の陰謀劇、という一見地味な題材だが、蓋を開けてみれば満席回が続出。拡大公開、ロングランが続いている。いったい何がこのヒットを呼んだのだろうか。
◆◆◆
公開館は当初の2倍に拡大
洋画低迷の時代にあって、『教皇選挙』のヒットは静かな驚きをもって迎えられている。3月の公開から約2カ月で60万人以上を動員し、興行収入は9億円を越え、10億円の大台も見えてきた(5月15日時点)。106館でスタートした劇場は、5月中旬にはほぼ2倍の210館になるという。配給元のキノフィルムズの宣伝担当者も、「嬉しい驚きです」と語る。
「何度もリピート鑑賞されるお客様が多いのも特徴です。中には15回ご覧になった方もおられるそうです。物語の面白さに加えて、美術やロザリオといった小道具など、細部を楽しんでくださってもいるようですね」
もともと作品の質は期待されていた。キノフィルムズは2022年のカンヌ映画祭で本作の買い付けを決定。当時は脚本段階で撮影前だったが、知られざるコンクラーベを描いたベストセラー小説が原作であり、2023年の米アカデミー賞で9部門にノミネートされ国際長編映画賞などを受賞した『西部戦線異状なし』のエドワード・ベルガーが監督、主要キャストの顔触れなどで話題を呼んでいた。
その後完成した作品で、主演のレイフ・ファインズをはじめ、スタンリー・トゥッチやジョン・リスゴーといった渋めのバイプレイヤー、イタリアの名優セルジオ・カステリット、イザベラ・ロッセリーニと、まさに豪華なキャスト・アンサンブルが実現した。