「私は父が好きだったんです」「母が出産しました。僕の子どもです」――タブーとされる「家族間性交」当事者たちは何を思い、日々を過ごしているのか。『近親性交 ~語られざる家族の闇~』(阿部恭子著、小学館)より一部抜粋し、お届けする。なお、本文中の人物名はいずれも仮名。(全3回の2回目/前回を読む/続きを読む)
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悠馬が中学3年生の頃、悠馬の部屋を掃除していた恵理子は、いわゆる「エロ本」を見つけてしまった。そこには、女性が電車で痴漢をされている写真や、女性が複数の男性を相手に性行為をしている写真が載っており、恵理子はショックを受けた。
「こんな女性を馬鹿にしたような雑誌が出回っているんだと思うとゾッとしました」
さらに、どこで手に入れたのか問い詰めると、悠馬は本屋で万引きしたと告白した。
「うちの息子が万引きなんて……。世界が終わるかと思いました……」
翌日、恵理子は悠馬を連れて書店に向かうと、本の代金と10万円を支払い、店主に土下座をして謝罪をした。
15年「レス」だった母が、息子とセックスし始めた“言い訳”
「雑誌に載っていたような、性犯罪まがいの行為を覚えたら、将来大変なことになります。だから私が教育しなくちゃいけないと思ったんです」
悠馬は頻繁に、母親に性行為を求めるようになった。それは密かに、15年ほどセックスレスだった恵理子の欲求を満たすものでもあった。
悠馬は無事に、念願叶って第一志望の大学の医学部に合格した。恵理子は嬉しかった反面、上京する悠馬と離れて暮らすことが不安で仕方なかった。恵理子はいっそのこと、一緒に上京したいと申し出たが、夫にも悠馬にも反対された。
恵理子は、毎朝、目覚まし時計代わりに悠馬に電話し、3日おきに手作り料理を宅配便で送り、毎週週末は悠馬の自宅に泊まり込みで押し掛けていた。学生生活は忙しく、悠馬は母親が料理や掃除をしてくれることを喜んでいた。週末はセックスをしており、悠馬に恋人を作る様子はなかったという。
これだけ密着していても、恵理子にとって悠馬との別居生活は寂しくて仕方がなかった。一時期、恵理子は韓流スターにハマり、韓国まで追っかけに行くようになった。韓流スターを追いかけている時だけが、恵理子が子離れできる時間だった。