『ゴッドファーザー』三部作(72~90年)、『地獄の黙示録』(79年)などの名作で、映画史にその名を刻む巨匠、フランシス・フォード・コッポラ監督が、85歳で新作『メガロポリス』を発表。古代ローマと現代のアメリカを重ね合わせた空前絶後の物語は、どのように生み出されたのか。最初の構想から40年、1億2000万ドル(約186億円)もの私財を投じて製作費を調達し、映画監督としての生涯をかけて挑んだ最新作への思いを語った。

公式インスタグラムより引用

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現代のアメリカを古代ローマに重ねて描いた新作『メガロポリス』

──これまで輝かしいキャリアを重ねてきたあなたが、86歳で新たな大作を生み出す映画製作への情熱はどこから来ているのでしょうか。

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フランシス・フォード・コッポラ監督(以下、F・コッポラ監督) 私は16~17歳で演劇の演出からキャリアをスタートさせ、その後、映画を作るようになった。

『ゴッドファーザー』(72年)が大ヒットした後は、ギャングスターの映画を作ることばかりを期待された。映画業界は、一度成功すると似たような作品を作ることが期待されるビジネスだからね。「そのほうが儲かる」とも言われる。

 でも、私は金儲けのために映画を作っているわけではない。もともと音楽家の一家に生まれているし、ギャングスターの映画ばかり撮っているキャリアは持ちたくなかった。だから、いろいろな種類の映画を撮りたいと言ったんだ。

amazonより引用

 なかでも、若い頃に観た『ベン・ハー』(59年)や『スパルタカス』(60年)のような古代ローマを舞台にした巨編映画は、深く心に残っていた。だからいつか自分もローマ叙事詩のような映画を作ってみたいと思っていたんだ。

──『メガロポリス』は、古代ローマと現代を重ねることで、現代のアメリカを象徴するような世界観を生み出しています。

F・コッポラ監督 よく考えてみると、私が住んでいるアメリカは、古代ローマの原理に基づいて建国された国。王はおらず、元老院があるところは、大統領がいて上院議員制度があるのと同じだろう? そう考えると、現代のアメリカはある意味、古代ローマの鏡のようにも見えたんだ。そこで私は、古代ローマを模倣した現代のニューヨークを舞台に、新たなローマ叙事詩をつくったら面白いのではないかと考えた。そこから『メガロポリス』のアイデアが生まれた。

 アイデアとしては突飛かもしれないけれど、これまでも「コッポラは西部劇を撮るな」とか、「ミュージカルは作るな」など、いろいろ押しつけられては、それに抗ってきたからね。生きている限りは映画を作っていきたいという思いは誰にも止められないよ。