16歳の頃から原因不明の腹部膨満感と腹痛に悩まされてきた医師のエマ・大辻・ピックルスさん(47)。食後30分で必ず襲ってくる苦しさは「食事の後に地獄が待っている」状態だった。
しかし、20年以上の長きにわたり病名がつかず、「精神疾患」と言われながらも、38歳でようやく「慢性偽性腸閉塞症(CIPO)」という難病の診断にたどり着いた。胃の大部分と大腸を摘出し、現在はオストメイトモデルとして活動している彼女の壮絶な闘病の日々を追った。
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「食べるとウエストが60センチから80センチまで膨れ上がっていました」16歳で難病発症
エマさんの体調不良は高校生の頃から始まった。「食べるとウエストが60センチから80センチまで膨れ上がっていました」。食後の腹部膨満感と痛みは強烈で、「体に大きな風船が入っているような感覚」だったという。
おなかの痛みを抑えるため、一日一食の生活を強いられ、食べた後はすぐに横になって寝るという生活を続けていた。
医学部を卒業し、医師として働き始めた後も、原因不明の腹痛と嘔吐に悩まされ続けた。
「研修医2年目の時、出勤途中に突然、道端の花壇にマーライオンのようにわーっと大量に嘔吐をしてしまって」
しかし検査を重ねても原因が特定できず、「あなたは心の弱い人だとわかったので、適当に結婚してバイト医者でもすればいいんじゃない」と医師から言われるなど、心無い言葉に傷ついた。
38歳でCIPOと診断→41歳で人工肛門→大腸全摘
33歳で出産したエマさんだが、産後も体調は改善せず。むしろ腹痛は悪化し、「食べるとのたうち回るほどの激痛」に襲われるようになった。出産後も「まだもう一人お腹にいるみたいで、こんなことは普通ありえない」と産院の医師に指摘されるほど、お腹は膨らんだままだった。
長い闘病の末、38歳の時にCIPOの診断がついた。「『勝った』と思いましたね。ずっと精神病だと言われてきたことも、やっぱり違ったじゃん」と、ようやく得られた診断に安堵した。
診断後、胃の大部分を切除し、41歳の時にCIPOの大腸型も併発したことからストーマ(人工肛門)を造設。その後も大腸の動きが悪いことから大腸全摘出に至った。
エマさんは「何年も苦しませやがって、と思って。もっと前に診断がついてたら、発症した16歳の時にとっとと切ったのに、本当に腹立たしい」と笑いながら話す。
ストーマを造設した後の生活は想像以上に大変だ。「イカとかタコは固くてストーマから出せないのでダメ」「春菊なんか食べようものなら、人工肛門からスルスルとマジックのように出てきます」と、食事制限について語る。
子どもと添い寝していた時にパウチ(ストーマ袋)が爆発し、「便だらけになってしまった」こともあった。「臭いよね、マジごめん」と謝ると、子どもは「いや、洗えばすむことだから」と答えたという。
「排泄は生きている証拠なんですよね。がん患者の方を診ていた時、だいたい亡くなる1週間前に排便が止まって、3日前くらいには排尿もなくなるんです。だから、排泄物が出ているということは、『今日も生きられた』という、健康の証です」とエマさんは話す。
現在、エマさんはオストメイトモデルとして活動している。オストメイトの方がストーマを造設したことでうつ病になったり、自殺に至るケースがあることを知り、「海外にはオストメイトのモデルもいる」という話を聞いて、自らも情報発信を決意した。
「見た目にはわからなくても、同じ社会にはいろんなものを抱えて生きている人がいるんだよ、ということを伝えていけたらいいな」
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